防衛省

一般会計歳出が過去最大の114兆円に達した2023年度予算が成立した。今後は、決定を先送りした防衛費増額の財源となる増税の実施時期などが焦点になるが、国際情勢やアジア情勢をみれば防衛力の強化は喫緊の課題だ。速やかに財源の確保が求められる。

 

ロシアによるウクライナ侵攻は、現在の国際社会でも他国が武力によって他国を侵略するという現実をまざまざとみせつけた。これは欧州から遠く離れた日本でも、決して傍観できることではない。

アジアでも世界第2位の経済大国となった中国が軍事力を着実に増強しており、日本にとってまぎれもない〝脅威〟となっている。

 

2022年版防衛白書では、「中国の軍事動向などは、国防政策や軍事に関する不透明性とあいまって、わが国を含む地域と国際社会の安全保障上の強い懸念」などと強調している。

そのうえで、①中国が演習名目で軍を中国沿岸に集結させ、偽情報を流布②ミサイルとサイバー双方で重要施設を攻撃③上陸作戦で制圧―などと台湾有事のシナリオも示している。

 

もちろんこれは幾つもあるシナリオの1つだろうが、それだけ台湾環境の緊張が高まっているということだ。

台湾は、沖縄県与那国島はから約100キロしか離れていないうえ、その間の海域は、中国海軍の艦艇が東シナ海・太平洋間を航行する際の経路の一つとなっている。このため、仮に台湾海峡の緊張がさらに高まったり、台湾への侵攻が現実となったりした場合、沖縄県への影響は避けられない。

 

政府は、2023年度からの「防衛力整備計画」で、5年間の防衛費総額を43兆円程度と定めている。これには17兆円規模の追加財源が必要で、政府はこのうち3.5兆円程度を法人税などの増税で賄いたい考えという。

 

ただ、日本の経済状況を勘案して、国債の「60年償還ルール」の緩和や廃止で、国債償還費を防衛費に回すという考え方もあり、現在はまだ流動的となっている。

 

増税か否かは別として、現在の日本が防衛力を抜本的に強化する状況に措かれていることは間違いない。

現在の国民の生命・財産、安定した経済生活、領海、領土、領空を守ることは、将来の子どもたちの社会を守ることでもある。防衛力の強化が、他国の軍事力行使の抑止力となる。